「クラスの生徒が不登校になると担任は何かペナルティを受けるのかな」
「ペナルティがあるから担任がしつこく電話してくるんじゃないの?」
「逆に担任にペナルティを受けさせてやりたい。不登校は担任のせいだから」
このような思いを抱えていませんか?
私も教え子に似たようなことを言われたことが多々あります。
私は不登校支援のスペシャリストとして100人以上の登校復帰をサポートしてきた元中学校の教員です。
学校内部の事情もよく分かっていますので、読者の方の疑問に具体的に答えていきますね。
結論から言えば、不登校になったことで担任がペナルティを受けることは原則ありません。しかし指導や懲戒処分を受けるケースも中にはあります。
本記事では担任のペナルティにまつわる様々な事実、担任や学校の評価に関わる事情をくわしく取り上げます。
さらに担任のペナルティが気になった読者の方の気持ちに焦点を当て、その気持ちを「不登校の現状を変えていく力」に引き上げるための方法にまで踏み込んでお伝えします。
ぜひ最後まで読んで、感じた疑問を自分の力に変える体験につなげてください。
<本記事のポイント>
- 不登校になると担任がペナルティを受けるのかが分かる
- どのような場合に担任が指導や懲戒処分を受けるのかが分かる
- 不登校に取り組む担任や学校がどのように評価されるのかが分かる
- 「担任へのペナルティ」という疑問を自分の成長に生かす方法が分かる
不登校に関連して担任はペナルティや評価を受けるのか
不登校になると担任はペナルティを受けるのか
自分のクラスの生徒が不登校になったとしても担任がペナルティを受けるということは原則ありません。
不登校は様々な要因が複雑に結びついて起きる現象と考えられているからです。
実際に私の教員生活10年間で同僚の教員が不登校を理由としてペナルティを受けたという話は聞いたことがありません。
文科省「教育職員の懲戒処分等について」も確認してみましたが、不登校を理由とした処分の項目はありませんでした。
学校内の事情は外からは全く見えないために「担任がペナルティを受けるのではないか」と考えてしまう人もいるかもしれませんが、これは全くの誤解だと言えます。
不登校が悪化すると担任はペナルティを受ける?
すでに不登校になっている生徒の状態が悪化してしまった場合も、同じ理由で担任がペナルティを受けることはありません。
ただし生徒の状態が悪化した背景に、担任の行動が関わっていることが明らかな場合には教育委員会や校長から担任に対して「指導」が入ることはあり得ます。
例えば担任が不登校の生徒や家庭の意向を配慮せずに登校をしつこく促したり、逆に生徒や家庭と連絡を取らないままにするなど長期間放置したりして生徒の状態が悪化した場合に、不登校生徒への適切な関わり方や支援方法について指導を受けることはあります。
とはいえこの指導は、担任へのペナルティという意味合いよりも、不登校の生徒や家庭により配慮の行き届いた対応ができるようになり、ひいては不登校の生徒の苦しみを解消していくためのサポートという意味合いが強いものです。
教育委員会も、校長や副校長といった学校の管理職も、担任の成長や不登校生徒の状況改善を願って行われる指導だと位置づけられます。
担任が原因で不登校になるとペナルティを受ける?
不登校は様々な要因が結びついて起きる現象とお話ししましたが、担任の不適切な行動が明らかに不登校を招いたと判断できる場合には、担任は「不適切な行動」について何らかの処分を受けることがあり得ます。
例えば「生徒を殴った」「生徒にわいせつな行為を行った」などの暴力があった場合、また「生徒を口汚くののしった」「生徒に差別的な発言をした」などの暴言があった場合に、「体罰」や「わいせつ行為等」の理由で懲戒処分を受けることはあるのです。
不登校が理由というよりは、「体罰」「わいせつ行為等」という不適切な行動自体が懲戒処分というペナルティの対象になっているわけですね。
不登校の生徒の中には「自分が不登校になったのは担任のせいだ」と感じている人も一定数いるでしょう。
この場合、心に留めておいて欲しいことは、「担任のせいだ」と感じていることと、実際に懲戒処分の対象になるかどうかは別問題ということです。
「担任に言われたあの言葉で実は傷ついていたんだ」という人もいると思います。しかしあくまで懲戒処分というペナルティに該当するのは、明確な暴力や暴言です。
担任がよかれと思ってした行動や発言、暴力や暴言には該当しないレベルの振る舞いや声かけがペナルティの対象になることはありません。
担任の行動や発言で傷ついたという人もいるでしょうが、何としても担任に責任を取らせたい、ペナルティを受けさせたいと強く思っていたとしても、明確な暴力や暴言に該当しない場合には、思うようにいかないこともあります。
不登校は本当につらい状況ですから、誰かに責任を取ってもらいたいという気持ちもよく分かります。しかし一番大切なことは不登校になった今の苦しさをどのように解消し、そして自分にとって楽しい人生をどのように歩めるようになるかということのはずです。
明確な暴力や暴言があった場合にははっきりと訴えていくべきですが、そうではない場合には、怒りに任せた行動ではなく冷静な対応を心がけるようにしていってください。
「ああ言われた」「いや言っていない」など不毛な言い合いに巻き込まれて余計に疲弊してしまうことがあるからです。
不登校を解消すると担任は評価される?
逆に担任が生徒の不登校を解消するのに大きく貢献したとしても、それだけを取り上げて評価されるということもありません。
今後のキャリアや賞与に関わる人事評価や、転勤先に関わる人事異動への影響もないです。
学校における教員の評価というのは、授業力、生活指導力、進路指導力、学校運営への貢献度などを総合して評価されるものだからです。
現に私自身、不登校生徒の登校復帰を支援できた件数は他の教員よりも数倍ありますが、そのことだけを取り上げて評価が上がったとか、賞与が増えたということは一回もありません。
ただし不登校生徒への支援実績が豊富にあることから、学校内で組織される不登校関連のプロジェクトを任されるなど不登校に特化した役職を数多く担うことで、間接的に「学校運営への貢献度」が認められて評価が上がるということはあります。が、これは不登校のことばかり四六時中考えて仕事をしていた私のような特殊なケースに過ぎません。
多くの担任が不登校生徒のために力を注ぐ行為は、評価とは関係ないものです。
教員というのは子どもが好きで教員になっています。ほとんどの教員が、自分の評価とは無関係に、不登校の生徒をどうしたら助けてあげられるかを心から考えて行動していると考えて構いません。
もちろん教員側の思いが不登校の生徒や家庭の考えとは合わずギクシャクすることもありますし、中には良からぬ教員もいます。しかし大多数の教員は不登校の生徒のことを心から心配していることは知っておいてください。
学校が不登校への対応を評価されることはある
学校の取り組みが教育委員会から評価されることはあります。
令和5年度の文科省の調査結果によれば、不登校の生徒数は11年連続で増加し、過去最多となっており、不登校は非常に大きな教育課題となっているからです。
このため文科省の方針をもとに学校ごとに不登校問題に対する独自の取り組みが数多く策定されており、その結果が評価されることがあるのです。
このように聞くと、学校側が不登校を何としても解決するために無理やり不登校の生徒や家庭に何かを強いるように感じるかもしれません。しかし実際は、不登校に至った背景にできる限り配慮し不登校の生徒や家庭にとって無理のない形でのサポートを展開する形が主流になっています。
評価を獲得するために学校側が無理強いをするようなことはほとんどありません。
逆に不登校支援で効果の高い取り組みが多くの学校に共有される流れがあり、不登校の生徒や家庭にとって有益な方向に進んでいます。
「不登校の担任ペナルティ」が気になる理由をうまく生かす
不登校によって担任がペナルティを受けることも特別な評価を受けることもないことは分かってもらえたかと思います。
ここでは一歩進んで、読者の方がなぜ「不登校による担任へのペナルティ」が気になったのか、その理由を考えていきます。
理由には主に4つのパターンがありますが、理由ごとにさらに深掘りして、読者の方が「気になる」という経験を通して不登校の現状を改善していく営みにつなげていきたいのです。
不登校の生徒にとって、またその家庭にとって最も大切なことは「担任にペナルティがあるかどうか」ではなく、不登校のつらい状態が改善され、楽しい人生を送っていけるようになることだからです。
ペナルティがあるのか気になる4つの理由を捉え、その理由を読者の方の人生にどう役立てていくとよいかをそれぞれ解説していきます。
ペナルティがあるのか気になる理由4パターン
- ペナルティがあるから、担任が登校をしつこく促すのではと考えている
自分は登校したくないのに、担任がしょっちゅう電話して登校へのプレッシャーをかけてきて苦しい、と感じている人もいるでしょう。この場合に「もしかして自分が登校しないと何か先生にペナルティがあるから、必死になっているのではないか」と考えるのは自然なことです。 - 不登校の原因が担任にあると考え責任を問いただしたいと考えている
まだ不登校になる前に担任に言われた一言や、された行動で深く傷ついたという人もいるかもしれません。このケースでは「不登校になったのは担任のせいだ」と恨みに感じることもあるでしょう。恨みに思う担任に何とか責任を取らせたい、罰を受けてほしいと考えたとき、不登校を招いた担任に何かしらペナルティがないかと調べたくもなりますよね。 - 不登校が担任や学校に及ぼす影響を単に知りたい
不登校が増加していると日々ニュースで見ることも多い昨今、不登校によって担任や学校にどんな影響が出るのだろうかと気になったことで調べた人もいるでしょう。 - ペナルティがあることで不登校が改善するのではと期待している
逆に、何かペナルティがあれば教員は真剣に不登校の問題に取り組もうとするから、不登校の子どもたちにとっていい影響が出るはずだと考え、実際にペナルティがあるのかどうかを調べてみたという人もいるかもしれません。
次にそれぞれの理由ごとに、その理由を感じた経験を、自分の人生にどう生かすとよいかを見ていきます。
すべて読む必要はありません。
自分に当てはまる理由の部分に飛んで読み進めてください。
理由1:担任がなぜ登校させようとするのか気になる場合
担任がしつこくしてくる背景を理解した上で、自分の希望を担任にはっきりと伝えることが大切です。
担任にペナルティがないことは分かったはずです。ではなぜ担任は「しつこく」電話してくるのでしょうか?
実は担任もどうすればいいか悩みながら生徒に働きかけているのです。
不登校になって困っている生徒を何とかしてあげたい、でもどうすればいいのか、ずっと頭の片隅に思いながら、何とかコンタクトを取り続けようと電話している場合も多くあります。
生徒の方からすればそれがいい迷惑なのですが、迷惑なことも分からない状態で、担任は手探りに生徒と関わろうとしているのです。
担任の行動に嫌気がさす気持ちも分かりますが、まずは「自分のことを心配してくれているんだ。何とかしようと頑張っているんだ」と担任の行動を捉え直してください。
その上で「頻繁に電話をかけられると実はプレッシャーになって苦しい」という本音を自分からか保護者から担任へはっきりと伝えるようにしましょう。
自分の思いや希望を伝えることで、担任もその気持ちを理解できるようになり、距離の取り方やサポートの仕方を工夫してくるようになっていきます。
そうすれば「嫌だ」と感じていた担任との関係も少しずつ変わっていくはずです。
さらにこの経験は、「相手の行動の背景を理解する」「自分の意思を相手にちゃんと伝える」という将来社会で生きていく上で非常に重要なスキルを身につけることにもつながるのです。
ぜひ実践してみてください。
理由2:不登校への担任の対応に不信感がある場合
このタイプの方は担任に罰を受けさせたいという気持ちが強いと思います。そのような気持ちになるのもやむを得ません。「担任は自分のことを分かっていない」と思わざるを得ない嫌な経験をしてきたのだと想像します。
そのつらい思いを承知した上で、担任のことを考えるのはもうやめましょう。仕返しをしようとしても、不登校の現状に対する解決には決してならないからです。
不登校になったことに関して担任へのペナルティが実際にないことは分かったはずです。それでも、何とか受けた被害を大きく見積もって担任を懲戒処分に追いやりますか?
あなたを理解できなかった担任のために、あなたがそこまで労力をかけてあげる必要はないのです。さらに担任がもし懲戒処分になるなど罰を受けたとしても不登校の状況改善とはほとんど関係がありません。
加えて言うと、この先の人生でも必ず不信感をもつ相手が現れます。誰の人生にも必ずそういう人は現れるからです。では不信感をもつ相手が現れるたびに、仕返しをしていくべきだと思いますか?それは人生の歩き方として生産的ではありません。
あなたに不信感を植え付けた担任など放っておいて、今の自分を次のステージに押し上げることに集中してください。
最低限の事務的な話を除き、担任とやりとりをする必要はありません。
それよりもあなたがやりたいこと、できることをコツコツ積み重ねていきましょう。不登校が回復してくると次第に自信も取り戻していきます。
自信を取り戻し、さらにできる行動が増えていけば次のステージで楽しい生活を送れるようになります。
そのときには、担任に不信感を抱いた今回の経験もあなたにとっての宝になります。その宝というのは、また似たように不信感をもつ経験をしたとしても、それほど傷つかずに対処できるようになるスキルという宝です。
担任への不信感はもう脇に置いておき、あなたの人生にとって有益な経験に時間を使っていってくださいね。
理由3:不登校が担任や学校に及ぼす影響が知りたい場合
不登校というキーワードをきっかけに担任や学校への影響を知りたいと考えた好奇心旺盛な方は、その好奇心が大きな武器になります。
何かを知りたいと思うこと、知るために調べることは、人生を切り開いていくために必要不可欠な営みだからです。
すでにそれができているあなたは、ぜひ担任や学校について知りたいと思ったその好奇心を、「不登校の自分はどのように生まれ変わっていけるのか」を探る方向へ向けていってください。さらに、もし生まれ変われたなら、その生まれ変わりに何がいい影響があったのかを探っていきましょう。
そこまで突き詰めると、あなたの不登校という経験はあなただけの経験を飛び越えて、あなたのように苦しんでいる他の人々を助ける知恵にも変わっていきます。
担任や学校はあなたにいい影響を与えるかもしれないし、何の役にも立たないかもしれません。けれどもあなた自身は必ずあなたの役に立ちます。好奇心をぜひあなた自身をよりよいものにするために活用していってください。
知りたいことをこの記事を探し当てたように探っていけるあなたなら、自分の状況をどのように変えればいいのか、自分はどんな道に進みたいのか、についても探っていけるようになるに違いありません。
ペナルティについて調べたことをきっかけに、自分の将来に関わるわくわくするような知識をどんどん調べて、そして行動に移していってください。好奇心は最高の武器です。
理由4:ペナルティで不登校が改善するのではと期待している場合
このタイプの方は、担任にペナルティがないことを知り残念に思っているかもしれません。しかし安心してください。不登校への取り組みはどんどん積みあがっていくことが期待できるからです。
不登校の問題は文科省が非常に大きな課題として取り上げ、不登校を解消していくための取り組みに相当なエネルギーを使っているのです。
※参照:文科省「不登校の児童生徒等への支援の充実について(通知)」
とはいえ一方で、教育委員会や学校といった組織の動きは「遅い」ということも知っておいてください。文科省から方針が出されたら一瞬で学校の方針が変わるということではないからです。文科省の方針を受け、各学校がその方針を具体的に学校教育に取り入れるのかについては様々な準備や試行錯誤が必要です。そのために教育委員会や学校の動きは遅くなってしまうのです。
ですから担任や学校にあまり期待しすぎない方がいいかもしれません。
それよりもあなた自身がどうしていきたいか、その希望を実現するために一歩ずつ何ができるのかを見定めていくことをおすすめします。
誰かや何かに期待しても、期待は裏切られることがあります。それならば外側の何かに期待するより、その時間に自分がやりたいことに打ち込んだ方が生産的だと言えます。
人は期待通りに動きませんが、自分が自分に期待すれば、工夫次第で期待通りに動いていけます。
「担任ペナルティ」を調べた経験を、自分に期待する自分を目指すきっかけにしていってください。
不登校の担任ペナルティを調べたことを大きなバネに:まとめ
本記事のポイントは以下の通りです。
- クラスの生徒が不登校になっても担任にペナルティはない
- 担任に暴力・暴言があった場合は懲戒処分というペナルティの対象になることもある
- 不登校の解消に貢献しても担任が特別に評価されることはない
- 不登校への学校の取り組みは評価されることがある
- 「担任にペナルティがあるか」が気になった経験は自身の成長に生かせる
担任にペナルティがあるかを知りたい動機は人によって違ったと思いますが、どの動機であっても「よりよい自分を目指す」ことにつながります。
ぜひ今回興味をもって調べたことをきっかけに、自分自身の楽しい人生を築く一歩を踏み出していってください。
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