出席扱い制度って何?
制度の具体的な内容が知りたい。
制度はどうやって利用すればいいのかしら?
どれくらいの人が利用しているのかな?
成績はどうなるんだろう?
本記事は、どこよりも分かりやすく、上記の疑問にお答えします。
<本記事の内容>
・そもそも「出席扱い制度」とは?
・出席扱いと認定される条件を分かりやすく徹底解説
・出席扱い制度利用までの流れ
・補足情報
・まとめ
本記事を読むことで、以下のことができるようになります。
・出席扱い制度について年齢ごとにどのような条件で利用できるかがはっきり分かる。
・制度を利用するための手順を知ることができる
・制度を利用する上での注意点やメリットを知ることができる
出席扱い制度についての知識を確実に身に付け、必要に応じてお子さんの子育てにお役立てくださいね。
そもそも「出席扱い制度」とは?
文部科学省では、不登校の問題を「進路の問題」と捉え、学校以外での学習活動を出席と認定できる「出席扱い制度」を平成17年度よりスタートさせました。
その後、運用ルールに追加・修正が加わり、令和元年より現在の形の「出席扱い制度」を実施しています。
出席扱いと認定される条件を分かりやすく徹底解説
小・中学生と高校生で少し違う
それではどのような場合に出席扱いと認定できるのでしょうか。
小・中学生の場合は、「学校以外の施設での学習」と「自宅でICTなどを使った学習」の2パターンで出席扱いと認定されます。
高校生の場合は、「学校以外の施設での学習」の1パターンで出席扱いと認定されます。
高校生だと、「自宅でICTなどを使った学習」は出席扱いの対象とはなりませんので、注意が必要です。
さらに、高校は出席日数が足りていたとしても、決められた単位数を取得できなければ卒業することができません。長期の不登校から卒業を目指す場合、出席以外に、単位取得という別のハードルもあることにご留意ください。
正式に出席扱いと認定されるためにはいくつかの条件をクリアする必要があります。
それぞれのパターンの条件を、以下、パターンごとに解説していきます。
なお、文部科学省の通知文を参考にしていますが、通知文は言葉がかた苦しく分かりにくいので、できるだけかみ砕いた表現に直してお示ししていきます。
小・中学生で「学校以外の施設での学習」を行う場合の条件
(1)保護者と学校がしっかり連携できていること
(2)「学校以外の施設」は、「教育支援センターなどの公的機関」や「適切と判断された
民間施設」であること
※教育支援センターとは、以前に適応指導教室と呼ばれていた不登校対応の専門機関
※「民間施設」とは主に「フリースクール」や「不登校支援を行っている塾」を指す。
民間施設の場合は、校長と教育委員会による判断が必要
(3)(2)の施設に通っている、もしくは相談・指導を受けていること
(4)(2)の施設で学習している内容が、学校の教育課程にちゃんと沿っていると判断できる
なら、学校側はその学習を成績に反映できる。また数値での反映が難しい場合も、指導
要録に文章の形で評価を書くことが望ましい。
詳しく知りたい場合は、文部科学省の通知「(別記1)義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」を参照ください。
補足すると、(4)は学校側がすることなので、お母様の方は、(1)~(3)の条件を整えればよいということになります。
ただし成績に反映できることを学校側が知らない可能性があるため、この場合にはお母様から学校に反映してもらいたい旨を依頼する必要があります。
小・中学生で「自宅でICTなどを使った学習」を行う場合の条件
(1)保護者と学校がしっかり連携できていること
(2)「自宅でICTなどを使った学習」は、PCやタブレットによる学習、オンライン学習、
昔ながらの紙ベースの通信学習であること
(3)子どもが自由に学習を進めるのではなく、指導者が訪問したり、訪問が難しい場合は
オンラインなどを通して対面指導を行う場面がちゃんとあること
(4)子どもの学習の理解度を踏まえた学習プログラムであること。
(5)校長は、担任や保護者からの聞いて、指導や学習の状況について十分に把握しておく
こと
(6)「自宅でICTなどを使った学習」が出席と認められるのは、「学校以外の施設」での
相談・指導を受けることが難しい場合に限られる。
(7)学習している内容が、学校の教育課程にちゃんと沿っていると判断できるなら、
学校側はその学習を成績に反映できる。
詳しく知りたい場合は、文部科学省の通知「(別記2)不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」を参照ください。
補足すると、(5)(7)は学校側がすることなので、お母様の方は、(1)~(4)と(6)の条件を整えればよいということになります。
ただし、先程と同様、(7)については、成績に反映できることを学校側が知らない可能性があるため、この場合にはお母様から学校に反映してもらいたい旨を依頼する必要があります。
高校生で「学校以外の施設での学習」を行う場合の条件
(1)保護者と学校がしっかり連携できていること
(2)「学校以外の施設」は、「教育支援センターなどの公的機関」や「適切と判断された
民間施設」であること
※教育支援センターとは、以前に適応指導教室と呼ばれていた不登校対応の専門機関
※「民間施設」とは主に「フリースクール」や「不登校支援を行っている塾」を指す。
民間施設の場合は、校長と教育委員会による判断が必要
(3)(2)の施設に通っている、もしくは相談・指導を受けていること
詳しく知りたい場合は、文部科学省の通知「高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の対応について」をご参照ください。
小・中学校の「学校以外の施設での学習」の条件から、(4)成績評価についての項目がなくなっただけですね。
もう一度ざっくり整理すると、
・お子さんが、教育支援センター(適応指導教室)やフリースクール、不登校支援系の塾に通っている小・中・高生なら、「学校以外の施設での学習」の条件で、出席扱い制度を利用できる可能性があります。
・通うことが難しく、自宅でオンライン学習やタブレット学習、通信教育を使って学習している小・中学生なら、「自宅でICTなどを使った学習」の条件で、出席扱い制度を利用できる可能性があります。
出席扱いの条件、お分かりいただけたでしょうか。
それでは出席扱い制度を利用したい場合に、具体的にどのような手順を踏んでいけばよいのでしょうか。
次項でこの点を解説いたします。
出席扱い制度利用までの流れ
①担任に相談
出席扱い制度を利用したい旨を担任に相談します。
実は、出席扱い制度自体を知らない教員もかなりいます。
出席扱い制度について担任が詳しくない場合、文部科学省の資料(上記の通知文)などを見せ、制度の説明を交えながら相談する必要があります。
フリースクールや不登校支援系の塾、ICTなどの学習サービス業者によっては、出席扱い制度の利用実績が豊富なところもあります。
これらの事業者を利用している場合には、担任に相談する前に、前もって事業者に相談しておくと、必要な資料を送ってくれたり、場合によっては学校との交渉を担当してくれたりするケースもありますので、覚えておきましょう。
②学校内で協議
出席扱い制度を利用できる案件かが、学校内で協議されます。
学校側がはじめて出席扱い制度を検討する場合は、慎重に協議が行われ、追加の情報や資料を求められ、再協議となる場合もあります。
何度も再協議されるとお母様の方としてはうんざりしてしまいますが、もしお母様がこの扉を突破した場合、あとに続くたくさんの不登校のご家庭がこの制度をスムーズに利用できる道を開くことにもなります。
辛抱強く交渉を進めていきましょう。もちろんお母様のご無理のない範囲で。
③出席扱いとなる条件を話し合う
使用する教材や学習内容の確認、学習履歴の提出方法などを取り決めます。
この段階では、通っている施設や利用している学習サービス業者に協力を仰ぐ必要があります。
事業者によっては学校側と直接やりとりしてくれる場合もありますので、緊密に連絡を取りながら進めていきましょう。
④制度の適用スタート
条件のすり合わせが済んだらいよいよスタートです。
取り決めた条件に応じて、出席日数がカウントされていきます。
また学習内容や、学校での定期テストの受験を通して、成績評価にお子さんの努力が反映されていきます。
制度を利用しなければ、学期末にもらっても斜線だけだった通知表に、しっかりとお子さんの一歩一歩が書き込まれるようになります。
お母様としても、お子さんとしても、成果が目に見える形で現れるのはうれしいものですよね。
この項目の最後に注意点をお伝えします。
先程も少し述べましたが、必ずしも、全ての児童・生徒が出席扱い制度の利用をスムーズに認められるとは限りません。
場合によっては数週間~数カ月の間、認められないケースもあります。
その理由は、出席扱いと認定するかどうかの判断には、在籍校の学校長の考えが強く反映されるからです。
とくに学校運営する上での学校長の運営方針が判断基準になります。
制度利用がスムーズに進まない場合は、お住まいの市区町村の教育委員会に相談することで解決するケースもありますので覚えておきましょう。
補足情報
ここからは知っておくと便利な補足情報について2点お伝えします。
出席扱い制度の利用者数
平成17年にスタートした出席扱い制度ですが、平成の間はほとんど認知されておらず、利用者はほんのわずかでした。
令和元年に現在の形の出席扱い制度になってから利用者が急増するようになってきました。
参考までに、令和4年度の利用者数を見てみましょう。
小・中学校における不登校児童生徒数の合計が約30万人で、
このうち、
「学校以外の施設での学習」で出席扱いと認定された人数は、約3万3000人です。
これは10人に1人以上が利用している計算になります。
「自宅でICTなどを使った学習」で出席扱いと認定された人数は、約1万人です。
これはおよそ30人に1人が利用している計算になります。
「学校以外の施設での学習」と「自宅でICTなどを使った学習」を合わせると、令和4年度に出席扱いと認定された割合は、およそ7人に1人です。
かなりの割合の児童生徒がすでに出席扱い制度を活用していることがうかがえますね。
本記事を読まれて制度についてお知りになったお母様は、ぜひ今後の利用をご検討くださいませ。
出席扱い制度を使うと、成績にどれくらい反映してもらえるのか
成績というと、高校受験に直結する中学校で大きな意味をもちます。
中学校の成績評価について、少し説明しておきます。
中学校では、各教科それぞれで「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点ごとにA~Cの評価をつけ、その3観点を総合して1~5の評定をつけます。
出席扱い制度に関する文部科学省の通知をくわしく見てみましたが、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」それぞれで評価材料にできる具体的なポイントを明示しています。
つまり、「学校外の施設での学習」や「ICTなどを使った学習」でも、評価評定をつけることができると、文部科学省は明確に述べているわけです。
ただし、私自身が中学校の教員でしたのでよく分かりますが、中学校の成績は、高校受験に直結している関係上、各教員は定期テストの点数や提出物、日々の学習状況を評価材料として収集し、評価の基準を厳密に定めています。
そのため、「学校外の施設での学習」や「ICTなどを使った学習」が、どの程度まで評価材料として認めてもらえるかは非常に難しい側面があります。
各自治体の教育委員会や、各学校の学校長の方針によっても変わってくることが多いですので、学校側とよくすり合わせを行いながら理解を求めていく必要があります。
一方で、どれだけ学校側とせいいっぱい交渉しても、評定で3,4,5などを望むことが難しい可能性もあることをあらかじめ覚悟しておくほうがよいと思います。
とはいえ、不登校支援を強化する方向は今後も変わらないはずですので、今後は、成績評価に反映されやすくなる可能性は十分考えらえます。
日々のニュースに目を配っておきましょう。
まとめ
本記事では、出席扱い制度の概要、利用の条件、利用の手順、注意点やメリットについて、解説してきました。
お母様のお子さんも、すでに適応指導教室やフリースクール、不登校支援系の塾に通っているかもしれません。また通うことが難しい場合でも、ICTなどを使った学習を自宅でしているかもしれません。
これらの場合、もしまだ出席扱い制度を活用していないようでしたら、ぜひ活用をご検討ください。
※高校生の場合は、適応指導教室やフリースクール、不登校支援系の塾に通っている場合のみ、制度を活用できます。(自宅でのICTなどを使った学習は対象外ですのでご注意ください)
もう相当欠席しているから今さら出席扱いにしてもらっても…
とお考えの場合もあるかもしれません。
しかしこれから先、登校復帰ができるようになったあと、次の進路選択の幅を狭めないためにも、利用できる制度は可能な限り利用しておくことをおすすめいたします。
なお出席扱いに認定されると、フリースクールに通うための通学定期も発行可能になります。出費を抑える効果もありますので、お含みおきください。
とはいえ、出席扱い制度を学校側に求めていくのは、大きなエネルギーを使いますので、気疲れもあるかもしれません。
お母様の余裕があれば、くらいに考えていただいて大丈夫です。
一番大切なことは、お母様ができるだけ明るい気持ちで子育てに当たっていかれることです
本記事が、少しでもお母様の知識を整理するきっかけになれば何よりです。
本サイトでは、不登校の支援について、お母さまのお役に立てるような記事をアップしてまいります。
よろしければ、他の記事もご覧くださいませ。
それではまたお会いいたしましょう。
お母さま、くれぐれも日々のお体、お心、大切になさってくださいね。
お母様の一歩一歩を、心から応援しております。