「修学旅行、参加してみたいけど、『不登校なんて迷惑』と思われるかな」
「不登校で修学旅行に参加した人の実体験が知りたい。参考にしたい」
「修学旅行に参加するか、どうやって決めていけばいいんだろう…」
こんな悩みを抱えていませんか?
私の教え子たちもまったく同じでした。私は中学校の元教員で、不登校支援のスペシャリストとしてこれまで100人以上の登校復帰をサポートしてきた経験があります。
不登校だったその教え子たちも修学旅行に関しては悩みに悩んでいました。参加していい思い出を作った子もいれば、参加を見送った子もいます。参加してつらい思いをした子も、実はいます。
また修学旅行に参加する不登校の子たちを、不登校ではない生徒たちがどう捉えるのかについても、様々な形を見てきました。迷惑などとこれっぽっちも思わずに仲間に迎え入れる生徒たちもいました。一方で残念ながら、迷惑そうに振る舞う生徒もいました。
しかし生徒たちがどのような反応をするかは「そのクラスの集団としての質」によってかなり変わるものです。
結論から言います。
不登校で修学旅行に参加することを迷惑に思う生徒がいるかどうかは「そのクラスの集団としての性質」によって変わります。「クラスの性質」を見極めることが大切になるということです。
そして修学旅行に参加した方がいいかの判断基準は、この「クラスの性質」以外に、自分自身の心身の状態や学校側のサポート体制によります。
さらに修学旅行に参加できた場合も、できなかった場合も、本記事のステップを踏めば必ず成長につながります。
この記事では、
- 不登校の子が修学旅行に参加するのは迷惑なのかについての実態
- 修学旅行に参加するかしないかの判断基準
- 修学旅行への参加もしくは不参加を成長につなげるためのステップ
を解説します。
ぜひ最後まで読んで「迷惑かどうか」の不安から一歩踏み出し、自分の成長へと結びつけてください。
不登校の子が修学旅行に参加するのは迷惑なのか?
- 先生にとって迷惑になる?
- クラスメートにとって迷惑になる?
- 不登校の子が修学旅行に参加した実例4選
- 修学旅行に参加するかしないかの判断基準は?
- 修学旅行に参加しない生徒の割合は?
先生にとって迷惑になる?
迷惑に思う教員はほとんどいません。
大多数の教員は不登校の生徒をなんとかしてあげたいと心から願っているからです。
運動会・体育大会や合唱祭などの他の行事でも、不登校の生徒が少しでも参加できそうなら、教員全体で話し合い無理のない参加の形を実現しようと懸命に努力しています。
私もそうしてきましたし、他の同僚も皆そうでした。
修学旅行への参加を歓迎する教員がほとんどであると考えて問題ありません。
クラスメートにとって迷惑になる?
不登校の子の修学旅行参加を迷惑と思うクラスメートがいるかどうかは「在籍しているクラスの性質」によります。
そのクラスがお互いに助け合うことが自然とできる、お互いの違いを理解し合える集団に育っている場合、迷惑と思う生徒はほとんど現れません。
一方で、クラス内の大きな勢力への同調が全体的に強く、異質なものを排除しようとする集団になっている場合は、迷惑と感じてしまう生徒が一定数現れやすいです。
どのような性質のクラスになるかは、担任の考え方や手腕、地域柄、クラス内で影響力がある生徒の性質などにより変わります。
不登校期間が短く、自分のクラスの雰囲気が分かる場合は、クラスメートたちの顔を想像しながら、「クラスの性質」を考えてみてください。クラスメートの中に「迷惑だ」と感じそうな人はいますか?いる場合は実際に迷惑そうにされる可能性は捨てきれません。
不登校期間が長く、自分のクラスの雰囲気がよく分からない場合は、試しに修学旅行の事前学習に参加してみるのが手です。
勇気を出してクラスで活動してみて居心地がいいか、冷たい目線や言葉を投げかける人はいないか、温かい雰囲気か、などを探ってみると「クラスの性質」を感じやすいでしょう。
このように「クラスの性質」を見極めることで、修学旅行に参加したとき嫌な思いをする可能性をあらかじめ予測しておけます。
不登校の子が修学旅行に参加した実例4選
ここでは不登校だった私の教え子が、実際に修学旅行に参加した実例を紹介します。
楽しかった子もいれば、つらい思いをした子もいます。様々な可能性を目に入れてみてください。
F.Fさん(男子)の例
クラスメートとうまくできないのでは、と不安を感じていたF.Fさんでしたが、試しに参加した事前学習で、班活動にすんなり入れてもらえたことで楽しさを感じ始めました。時計係を任されたことで、毎日早起きの練習もするようになり生活のリズムも改善。
本番の修学旅行ではクラスメートにサポートしてもらいながらも係の仕事をこなし、無事に3日間を過ごせました。加えてこの修学旅行をきっかけに、F.Fさんは登校できる日数がどんどん増えていきました。
I.Rさん(女子)の例
I.Rさんは身体の疲労が出やすいタイプで、修学旅行に行きたいけれど、みんなと同じように行動できないのでは、と悩んでいました。当日行くかは保留のまま、事前学習に参加し、緊張やストレスを感じながらも少しずつ準備を進めていきました。
疲労が出やすいI.Rさんの様子が分かるようになると同じ班のメンバーが親身にサポートし始め、I.Rさんは修学旅行に行くことを決意。
本番の修学旅行では、疲れて途中で班活動から外れることもありましたが、班のメンバーが優しく声をかけてくれたおかげで活動に戻ることもでき、3日間を過ごしきることができました。
S.Kさん(女子)
修学旅行に強く行きたいと思っていたS.Kさんは勇気を出して参加を決意。事前学習から積極的に取り組み、当日も班活動を精力的にこなしました。
ただ慣れない環境や緊張感の中で精一杯頑張ってきたため、次第に心身ともに疲れがたまり、2日目の夜には限界を感じました。最終的に家族に迎えに来てもらい、修学旅行を途中で終えることになりました。
それでも振り返りの中で、他の生徒より厳しい状況の中で2日目まで全力で頑張りきれたと自分を捉え直せ、自分のペースで登校を続けられるようになりました。
N.Sさん(男子)
N.Sさんは修学旅行に行きたいという気持ちと、行くのが怖いという不安を長く抱えていました。事前学習に参加したり、気力をなくして参加できなかったりしながら「ここまでやったんだから行こう」と当日参加を決意。
しかし修学旅行中に班員の何気ない一言で深く傷ついてしまいました。その後、班活動に戻れず、残りの時間を教員と一緒に過ごすことになりました。
「行かなければよかった」と後悔していたN.Sさんでしたが、修学旅行の振り返りを通して
「傷ついたかもしれないが大きな一歩を踏み出せたこと」
「傷ついたあとに適切に避難して自分を守れたこと」
「傷つきながらも3日間を過ごす強さをもてたこと」
を自分の心に刻むことができ、自分の行きたい進路に向けて意欲的に取り組めるようになったのでした。
楽しい思いをした子はその経験自体が成長を促していきました。
しかしつらい思いをした子であっても、「失敗」と感じた出来事をポジティブに捉え直すことで、次の一歩を踏み出す原動力に変えていったのです。
修学旅行でどんな思いをするかは人それぞれかもしれません。
しかしそれがどんな思いであろうと、前向きな力に変えられるということをぜひ心に留めておいてください。
修学旅行に参加するかしないかの判断基準は?
「修学旅行に参加したいけど、本当に大丈夫なんだろうか」
不登校の生徒たちは誰しもこんな悩みをもちます。
強く参加したいと思う人はぜひチャレンジしてみましょう。
しかし自分が参加して大丈夫なのか不安でたまらない人は、以下3つの判断基準を参考にしてみてください。
1.本人の状態
ひとえに不登校といってもその状態は人により様々です。
不登校の回復段階で「回復期」に入っている人は参加を考えてみてもいいでしょう。
「回復期」以前の段階にある人は、事前学習や修学旅行本番で心身に不調をきたす可能性もあります。慎重に考えることをおすすめします。
不登校の回復段階についてよく分からない方は以下の記事を参考にしてください。
2.在籍するクラスの性質
お互いに助け合うことが自然とできる、お互いの違いを理解し合える雰囲気のクラスであれば、安心して修学旅行に参加できる可能性が高いです。
一方で、クラス内の大きな勢力への同調が全体的に強く、異質なものを排除しようとする雰囲気のクラスの場合、嫌な思いをすることがあり得ます。
事前学習などでクラスの雰囲気をよく見定めることをおすすめします。
3.学校のサポート体制
ほとんどの教員は不登校の生徒を何とかサポートしたいと願っています。しかし実際には業務量や担任の力量など様々な要因によって、手厚いサポートが叶わないケースもあるのです。
十分なサポート体制が望めるかを判断する指標として以下を参考にしてください。
- できる限りの要望に配慮しようとしてくれる
- 家庭に細かく報告や共有をしてくれる
- できること、できないことをはっきりと伝えてくれる
担任や関係する教員とやり取りをする中で、この3つを満たしている場合は、十分なサポートが受けられる可能性が高いです。
一方で、3つのうちいずれかを満たしていない場合には、サポートが行き届かない可能性が高くなります。
「本人の状態」「クラスの性質」「学校のサポート体制」をよく見極めながら、修学旅行の参加を検討していきましょう。
修学旅行に参加しない生徒の割合は?
参考までに修学旅行に参加しない不登校生徒の割合を紹介します。
(公財)全国修学旅行研究協会の調査によると、2023年度に茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉各県の公立中学校で修学旅行不参加の生徒数は7,942人でした。このうち不登校を理由にした不参加の生徒数は4,968人。
生徒数全体がおよそ15万人なので、不登校を理由に修学旅行に参加しなかった生徒の割合は約3.3%です。
これは1クラスに1人、修学旅行に参加していない生徒がいる計算となります。
本当は参加したくないけど、参加しない自分はやばいのかな、ともし不安に思っている方がいたら、修学旅行に参加しない不登校生徒はかなりいます。安心してください。
自分の本心から「修学旅行に参加してみたい」と思う場合にのみ、参加を検討すればいいのです。
不登校で修学旅行=迷惑の壁を破り成長するための7ステップ
ここまで修学旅行に参加しても大丈夫かどうかの不安について、様々な角度から解説してきました。
「修学旅行に参加してみようかな」と思った人もいれば、「参加はやめておこう」と思った人もいるでしょう。
しかしここからは一歩進んで、修学旅行に参加する場合も、参加しない場合も、その状況を成長につなげる方法があるということをお話しします。
以下7つのステップを踏むことで、参加・不参加どちらの状況も成長につなげられます。
- 不登校の子自身の考えを深堀りする
- 具体的な情報やイメージをもつ
- 修学旅行に参加するかしないかを「仮決め」する
- 事前学習に参加する
- 当日に向けて学校側と打ち合わせる
- 修学旅行に参加(不参加)
- 参加or不参加を必ず振り返る
順番に見ていきましょう。
1.自分自身の考えを深堀りする
修学旅行に対して今、自分はどう考えているのかをよく探ってみてください。
人によって様々な考えがあります。
例えば、
- 迷惑がかかるのなら行きたくないけど、そうでないなら本当は行きたい
- 担任や親からのプレッシャーから「行った方がいいかな」と思っているだけで、本当は行きたくない
- どうなるか何も分からないけど、とにかく行きたいとは思う
- 絶対に行きたくない
などがよくあるでしょうか。
修学旅行に対する「自分の本音」を捉えておいてください。
2.具体的な情報やイメージをもつ
修学旅行の事前学習や本番の様子を具体的に想像してみてください。
事前学習では、班ごとに机をくっつけて話し合いをしたりパソコンを使って調べ学習をしたりしている光景を想像します。
その中に自分がいるとして、やっていけそうですか?
修学旅行本番では、朝早く3年生全体で集合し電車や新幹線に乗ります。乗っている間、隣の生徒とおしゃべりをすることになるかもしれません。目的地についたら班ごとに行動します。1日中、班のメンバーと一緒に移動。夜は班ごとに部屋で過ごします。
その中に自分がいるとして3日間、やっていけそうですか?
修学旅行に参加した場合、これ以外にも以下の不安要素があります。
- 班のメンバーやクラスメートたちとの人間関係に途中で疲れるかもしれません。
- 普段とはまったく違う環境に3日間いることになります。ストレスがたまるかもしれません。
- 3日間、朝早く起きる必要があります。生活リズムに耐えられるでしょうか?
- 班行動が始まると教員の目が行き届かないことがあります。大丈夫そうですか?
- いじわるなクラスメートがいて嫌な思いをすることがあるかもしれません。
不安をあおるようなことを書き立てましたが、これらの不安は一度きちんと想像しておくことが大切です。
これらの不安要素は前もって学校側に相談することで解消できるものも多いです。しかし「何が不安なのか」を自分が知っていなければ学校に相談もできないのです。
自分にとって不安なポイントはぜひメモしておいてください。
学校側に相談するときの材料になるからです。
3.修学旅行に参加するかしないかを「仮決め」する
ここまできて、「絶対に参加したくない」と思う人は不参加がおすすめです。
様々なリスクを真剣に考えて「不参加」を選べた自分を褒めてあげてください。リスクに対して適切な態度を示せることは、この先の人生でも大きな役に立つからです。
一方で、それ以外の人はとりあえず「修学旅行に参加する」と仮に決めてください。
あくまで「仮」ですからいつでも変えられると思って気軽に決めてください。
なお担任に伝えるときは、「まだ参加できるか分かりませんが、事前学習に出てみて決めていこうと思います」などと完全な決定ではないことは伝えておきましょう。
4.事前学習に参加する
修学旅行の事前学習が始まったら勇気を出して参加してみましょう。
事前学習の班活動を体験してみて、クラスの雰囲気、班のメンバーの様子、班活動を続けていけそうか、などを探っていきます。
この段階で「やっぱり自分には無理そうだ」と感じたら不参加へ変更してもいいのです。実際に経験して、リスクを避けようと決断できた自分の勇気を褒めてあげてください。
「何とかやっていけそうかも」と感じた人は事前学習を継続していきましょう。その途中で嫌な思いをして無理になったら、その段階でいつやめてもいいのです。
続けられそうだと思う限り、やってみましょう。
なお修学旅行の具体的な内容が決まってくると、修学旅行本番の不安要素も様々に出てきます。これらをしっかりメモしておきましょう。
修学旅行の時期が迫ると、参加するかどうかの最終的な判断を担任から聞かれます。この段階で、事前学習全体を通して「修学旅行に参加する」「やはり参加しない」を決めます。
5.当日に向けて学校側と打ち合わせる
修学旅行への参加を決めた人は、メモしておいた修学旅行当日の不安要素について親御さんと話し合ってください。そして親御さんから担任へ不安要素について解消の方法はあるか、サポートを受けられるかなどを相談してもらいましょう。
よくあるサポートの例は以下のとおりです。参考にしてみてください。
- すべての行程には参加せず、無理そうな活動のときは教員と過ごす
- 班活動中に無理そうになったら教員にサポートしてもらう
- 夜は教員の部屋で過ごす
- どうしても無理になった場合は家族に迎えに来てもらう
不安要素についてあらかじめ学校側のサポートがあることを確認できると、その分、安心して修学旅行本番を迎えられるようになります。
なお不参加に決めた人は、可能なら「修学旅行の代わりになる活動」を計画してみましょう。
例えば「家族と旅行に行く」「一人でどこかにお出かけする」「学校に出席報告に行く」などです。
旅行やお出かけの場合は、自分で調べて計画を練ってみると「疑似修学旅行」のような学びが手に入ります。
もし代わりになる活動ができないとしても大丈夫です。
あらかじめ嫌な思いをするリスクを避けられたことを喜び、修学旅行当日はのんびりと過ごせばいいのです。
6.修学旅行に参加(不参加)
いよいよ修学旅行本番です。参加するかしないか慎重に考え続けた中で選び取った参加です。思い切って存分にチャレンジしてみましょう。
もしかすると学校側と打ち合わせたとおりのサポートが得られなかったり、予測できなかった嫌な思いをしたりすることもあるかもしれません。
しかし次の「振り返り」で必ずプラスの経験になります。
どのような経験も絶対にプラスになるのだと心に念じて行ってきてください。
不参加に決めた人は、「代わりになる活動」や「のんびり」をぜひ楽しんでください。これらも立派な「あなただけの修学旅行体験」です。
7.参加or不参加を必ず振り返る
参加もしくは不参加が終わったら必ず振り返りを行いましょう。一人で振り返ってもいいですが、できれば親御さんに頼んで一緒に振り返ってみましょう。一人だとどうしてもマイナスな気持ちになりやすいからです。
参加できた場合、楽しく充実した3日間を過ごせた人は、それを実現できた自分を褒めたたえてあげてください。
嫌な思いをして後悔をした人は「どんな結果であろうと参加できた勇気ある自分を褒めたたえてあげてください。人生は喜びの出来事よりも苦しみ悩む出来事の方がはるかに自分を成長させます。嫌な思いをして誰よりも成長の糧が手に入ったと心に刻み込んでください。
不参加を選んだ場合で、「代わりになる活動」を計画し実行した人は「たった一人の力で道を切り開き活動を達成できた自分」を褒めたたえてあげてください。
のんびり過ごせた人は「修学旅行に行かないという選択を勇気を出して実行でき、リスクをしっかり回避できた上で一日を過ごせた自分」を褒めたたえてあげましょう。
不参加を選び取るまでに悩み考え、経験し、そして決断できたことは本当にすごいことです。そんな自分に誇りをもってください。
不登校で修学旅行=迷惑の不安を越えて:まとめ
「不登校の自分が修学旅行に参加したら迷惑なのではないか」
どうしてもこんな不安に襲われますよね。
しかし本記事を読み進めてきたあなたはもう気づいているはずです。
修学旅行に参加するかどうかはどちらでもいい。
大切なのは、「参加する」「参加しない」を自分なりに考えて、経験して、決断すること。
そうすれば、参加して大成功した場合も、参加して嫌な思いをした場合も、参加しようとして辞めた場合も、参加しないと決断した場合も、必ずあなた自身が成長しているのです。
なぜならどの場合も「迷惑だったらどうしよう」という不安と戦った貴重な経験だからです。
不安と戦えたあなたなら、またこの先、別の不安が現れてもまた戦っていけます。
修学旅行に伴うこの不安の経験を、ぜひ自分自身の成長に役立てていってください。
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