不登校のオススメの高校が知りたい。
受験の形式はどうなの?
うちの子でも入れる見込みはあるかしら?
中学生の不登校のお子さんをお持ちのお母さまは、このような疑問が頭をよぎりますよね。
不登校によって欠席が多い場合、どうしても調査書点がつかず、多くの中学生が進学する全日制普通科の高校への受験は難しくなります。
※調査書点というのは、「内申点(各教科の成績)」と「生徒の学校生活全体の記録」を点数化したもの
じゃあやっぱり高校には入れないのかしら…
お母さま、安心してください。
調査書点を重視しない、または調査書点が不要の高校もたくさんあるんです。
本記事では上記の疑問に詳しく答えていきます。
さらに、本記事のまとめでは、お子さんの状態ごとにどういった高校がオススメかも解説しています。
どうぞ最後までご覧くださいませ。
<本記事の内容>
・不登校の子にオススメの高校
・まとめ
本記事を読むことで、以下のことができるようになります。
・不登校から行ける高校のタイプを理解することができる。
・高校ごとの特徴、入試の形式、どんな子に適しているかを知ることができる。
・自分の子どもがどういう状態ならどういう高校が合うか、理解を深められる。
不登校向けの高校について確実な知識を身に付け、進路選択に役立てていってくださいね。
不登校の子にオススメの高校
チャレンジスクール
<どんな高校か>
チャレンジスクールとは、主に小・中学校で不登校の経験があった生徒を主に受け入れている都立高校です。
高校のタイプとしては、
・総合学科(普通科の教科以外に、幅広い専門的な教科も用意されている)
・昼夜間定時制(登校時間を朝から・昼から・夕方からの3タイプで選ぶことができる)
・単位制(学年に関係なく、好きな教科を選んで単位取得をしていく)
です。
1日の授業数は少なく設定されており、余裕をもった学校生活で、4年間かけて卒業を目指します。
ただし、他の時間帯の科目を履修することで、3年間で卒業することも可能です。
生徒の雰囲気は学校によって違います。
例えば、校則や服装を重視する大江戸高校や稔ヶ丘高校は落ち着いた雰囲気の生徒が多いです。
一方で、自由な校風の六本木高校や世田谷泉高校は髪を染めていたり少しやんちゃな雰囲気の生徒もいます。
入学を検討する際には、学校見学で生徒の雰囲気をよく見ておくことをオススメします。
<入試の形式>
「小論文(作文)」「面接」「志願申告書」で合否を判定します。
調査書は不要です。
チャレンジスクールは人気が高く、倍率は平均1.2倍前後、高いところでは1.5倍になる学校もあります。
調査書点がないのは安心できますが、入念な受験準備が必要です。
<どんな子が適しているか>
まずは入学に際して、受験準備に取り組める状態にある子です。
合格するためには自己申告書や作文を書く練習、面接練習を重ねる必要があり、これにはかなりのエネルギーを必要とします。
お子さんの入試時期の状態が、受験準備に耐えられる心身の状態になっていればオススメです。
次に入学後に関して、毎日登校できる状態にある子が適しています。
1日の授業数が少なく4年間でゆっくり卒業を目指せるとは言え、登校が難しい状態だと卒業することができません。
中学卒業までに、別室登校でもいいので、毎日登校を重ねられる状態になっていれば、私の経験上からも、チャレンジスクール入学後に充実した生活を送ることができているケースが多いです。
一方で、中学時代にほとんど登校ができていない子の場合は、やはりチャレンジスクールに入っても登校から足が遠のいてしまいやすくなります。
まとめると、不登校のお子さんの中でも、すでにエネルギーがあり、毎日の登校に耐えられるくらいに回復している子向けの学校だと言えます。
<備考>
チャレンジスクールは「東京都立」の高校ですので、東京都在住のお子さんが対象です。
他の都道府県に似た高校は、神奈川県の「クリエイティブスクール」、埼玉県の「パレットスクール」、千葉県の「地域連携アクティブスクール」、大阪府の「クリエイティブスクール」などがあります。(令和6年度現在)
※大阪府はクリエイティブスクールを縮小し、「エンパワメントスクール(不登校向けというよりは、もっと広く学び直しやゆとりのある学習を軸とした高校)」への移行を進めています。
通信制高校
<どんな高校か>
通信制高校とは基本的に毎日学校に通う必要がなく、郵送やパソコン通信などを活用して単位を取得していく学校です。
私立が多いですが、中には公立の高校もあります。
登校は年に数回のスクーリングのみで、あとは自宅で自分で勉強しながら、「レポート提出」「定期テスト」をこなして単位を取得していきます。
※スクーリング日数は学校によってもっと多いところもあります。
<入試の形式>
学校やコースによって違いはありますが、「作文」「面接」「書類審査(入学願書など)」で合否を判定するところが一般的です。
ただし通信制高校の中には、学力テストを実施しているところもあります。
「作文」「面接」等はありますが、上記の「チャレンジスクール」ほど受験準備に力を入れる必要はありません。ありのままに自分自身のことを伝えれば合格できる場合がほとんどです。
もっとも、作文の書き方や面接時の礼法については必要最低限の知識が必要ですので、担任の先生と少し練習しておく方が万全かと思います。
調査書点は多くの通信制高校で不要です。しかし調査書点を参考にするところもあるので注意が必要です。
学力テストや調査書点の有無については、志望したい高校のホームページ等で確認することをオススメします。
<どんな子が適しているか>
人前に出たり登校したりすることは難しいけれど、自分で学習を進められるタイプのお子さんに適しています。
また体調に波があったり、決められた時間ではなく自分のペースで学びたい子にも適しています。
逆に自己管理が難しく自分で学習に取り組むことが難しいお子さんは適していません。
通信の教材を計画的に取り組むことが難しく、レポート提出や定期テストに滞りが起きがちで、単位取得ができなくなってしまうことが多いからです。
また人と関わりたいお子さんも適していません。
ほとんどが自己学習となるため、対人関係を広げていく機会が限られてしまうからです。
ただし、あとに述べる「サポート校」と併用する場合は別です。この場合は、学習サポートがあり、通学して出会える仲間がいるため、上記のマイナス面が相殺されます。
サポート校
<どんな高校か>
サポート校は厳密に言えば高校ではありませんが、不登校のお子さんの進学に大きな役割を果たしているので紹介します。
サポート校とは、通信制高校に通う生徒を支援するための教育施設です。主に以下のような特徴があります。
・学習サポート:通信制高校のカリキュラムに基づき、レポート作成やスクーリング、テスト対策などをサポートしてもらえます。
・メンタルケア:カウンセラーが常駐し、不登校経験がある生徒への精神的なサポートを行っています。
・個別対応:少人数制や1対1の指導が行われ、生徒一人ひとりのペースに合わせた学習が可能です。
・多様なサポート:進学サポート、専門学習サポート、ネット学習サポートなど、生徒の目標や興味に応じたサポートが受けられます。
サポート校に入学するということは、通信制高校と同時入学をするということになります。
通信制高校の学費は安い場合が多いですが、サポート校は私立ですので、その分の費用が上乗せされるので注意が必要です。
しかしその分、手厚いサポートで、通信制高校の卒業、場合によっては卒業後まで支援してもらえるという強力なメリットがあります。
<入試の形式>
学校によって様々ですが、「作文」「面接」「書類審査(入学願書など)」で合否を判定するところが一般的です。
「学力検査」を実施するところもありますが、得点はそれほど重視されておらず、あまりできなくても合格できる場合がほとんどです。
調査書点はほとんどのサポート校で不要です。調査書点を参考にするところでも、重要度は低いので、心配する必要はありません。
<どんな子が適しているか>
チャレンジスクールを目指すほどのエネルギーがまだなく、通信制高校だけでは学習を継続することが難しいタイプのお子さんに最適です。
また精神面でのサポートが必要なお子さんや、人間関係に苦手さがあるお子さんにも適しています。
精神的なサポートが充実している学校が多いですし、人間関係が苦手な子向けにじっくりと対人能力を伸ばしていくサポートも展開してくれるからです。
ただし、サポート校によって学校や生徒の雰囲気、サポートの内容は様々です。学校見学でお子さんに合うかどうかを慎重に検討する必要はあります。
エンカレッジスクール
<どんな高校か>
エンカレッジスクールは、不登校や学習に困難を抱える生徒を支援するための全日制普通科の都立高校です。
少人数での授業や、習熟度に応じたクラス分けが行われています。
また1年次には二人の担任がつき、きめ細やかな指導を行うとともに、集中力を保つために授業時間は30分となっています。
<入試の形式>
「調査書」「小論文または作文」「面接」で合否を判定するところが多いです。
加えて「実技検査」を実施するところもあります。
「調査書」も必要なので、不登校のお子さんの場合はやや不利になりますが、不登校生徒への配慮も行っており、調査書の内容については、不登校の背景や理由を考慮して評価されることが多いので、それほど深刻に考える必要はありません。
「小論文(作文)」「面接」を入念に準備する必要があります。
<どんな子が適しているか>
チャレンジスクールと同じく、入学に際して受験準備に取り組める状態にあり、入学後、毎日登校できる状態にある子が適しています。
チャレンジスクールとの違いですが、チャレンジスクールが「不登校向け」の高校であるのに対して、エンカレッジスクールは「学習不振向け」の色合いが濃い高校です。
そのため、チャレンジスクールに比べると、エンカレッジスクールの方が、学習の手厚さが必要な子が向いていています。
さらには「学習不振向け」ということでエンカレッジスクールには、「不登校系」の子以外に、「やんちゃ系」の子も多く入学してきます。
そのような雑多な環境でも過ごしていける子が向いています。
整理すると、学習能力がそれなりにあり、ある程度落ち着いた生徒たちの中で過ごした方がいいお子さんはチャレンジスクールで学びを深めるのがよいでしょう。
一方で、学習能力あるいは学習経験に乏しさがあり、様々な生徒がいる中でも過ごしていけるお子さんは、エンカレッジスクールで、じっくりと学び直すのがよいと思います。
<備考>
エンカレッジスクールは「東京都立」の高校ですので、東京都在住のお子さんが対象です。
他の都道府県に似た高校は、神奈川県の「フロンティアスクール」、茨城県の「フレックススクール」、群馬県の「フレックススクール」、大阪府の「エンパワメントスクール」などがあります。(令和6年現在)
定時制高校
<どんな高校か>
定時制高校は、朝から夕方まで学ぶ全日制高校と異なり、授業時間が短く、学ぶ時間帯を選べる高校です。
多くの定時制高校では、二部制(昼から/夜から)や三部制(朝から/昼から/夜から)があり、働きながら学ぶことも可能です。
また、1日の授業時間は約4時間程度で、卒業までに4年間を要することが一般的です。
※実はチャレンジスクールも「昼夜間定時制」なので、この定時制高校のグループに含まれますが、チャレンジスクールが「不登校向け」であるのに対して、その他の定時制高校は「それ以外の生徒も対象」にしている関係で、分けて説明しています。
<入試の形式>
一般的に「学力テスト(国語、数学、英語の3教科)」で合否を判定します。また「自己PRの書面」や「調査書」が求められることもあります。
「学力テスト」「自己PRの書面」「調査書」はありますが、チャレンジスクールやエンカレッジスクールに比べると倍率は低く、一次募集では1倍を下回るところもあります。
入試に向けて、できる範囲で学校に通ったり、「自己PRの書面」の準備をしたり、「学力テスト」に向けた勉強を積んでいく必要はありますが、チャレンジスクールやエンカレッジスクールのように入念な準備が必要な高校に比べて、ずっと「入りやすい」高校です。
<どんな子が適しているか>
①エネルギーは十分あるけれど、
②チャレンジスクールやエンカレッジスクールを目指せるほど受験準備に取り組む力がなく、
③定時制高校で自宅学習を進めるのは難しく、
④サポート校ほど手厚い学習支援やメンタルサポートは必要ないレベルの学習能力、対人関係能力、メンタルの強さがすでにある
上記の4点がそろっている子が適しています。
というのも、定時制高校は、「入学のしやすさ」や「1日の授業時間の短さ」などのメリットはありますが、入学後、不登校向けの手厚いサポートがあるわけではありません。
授業も少ないとはいえ通常通りに進行していきます。
さらには入学してくる生徒たちは、不登校系の子以外に、社会人経験者や非行系など多種多様です。
そのような雑多な環境で過ごしていけるだけの力がないと、入学はできたものの、通うことが難しくなることがあります。
学校見学をして生徒たちの様子をよく見ておくことをオススメします。
<備考>
定時制高校は、一部私立があるものの、ほとんどが公立です。
高等専修学校
<どんな高校か>
高等専修学校は厳密に言えば高校ではありませんが、学習よりも将来につながる技能を身に付けたいタイプのお子さんにとって大きな役割を果たしているので紹介します。
高等専修学校とは、中学卒業者を対象に職業教育に特化した学校で、専門知識と技能を身に着けることに重点を置いており、社会に出てすぐに役立つ実践的な教育を行っています。
学べる技能は学校によって違いがあり、「工業」「農業」「医療」「衛生」「教育・社会福祉」「商業実務」「服飾・家政」「文化・教養」の8つです。
授業は座学よりも実習や実技が多く、プロ仕様の設備や機材を使用することができます。
中には、学習面や生活面でのきめ細かい指導が行われ、不登校経験のある生徒や多様な個性を持つ生徒にも対応しているところもあります。
「高校」ではないので基本的に高卒資格を取得することはできませんが、学校によっては、高卒資格も取得できたり、大学入学資格を得られたりするところもあります。
<入試の形式>
学校によって様々ですが、「学力テスト」「面接」「書類審査(推薦状など)」で合否を判定するところが一般的です。中には「調査書」を求められるところもあります。
「学力テスト」や時に「調査書」はありますが、多くの高等専修学校では面接や書類審査を重視しており、また倍率も低いため、サポート校や定時制高校と同じく「入りやすい」学校です。
<どんな子が適しているか>
①ある程度エネルギーがあり、
②高校で勉強を続けることに意味を見出しにくく、
③雑多な環境でも過ごせるある程度のメンタルが整っている、
上記の3点がそろっている子が適しています。
様々な理由で勉強が苦手だったり、勉強自体に強い抵抗感がある子の場合は、高校以降も無理に勉強を続けさせるよりは、将来を意識して職業教育を受けさせた方がいいケースもあります。
お子さんが、学習より職業教育を望んでいる場合にはオススメですが、高等専修学校も多様な生徒を受け入れており、毎日実習の授業があるため、「ある程度エネルギーがあること」「雑多な環境で過ごせるある程度のメンタルがあること」の2点もそろっている必要があります。
エネルギーやメンタルが整っていない場合には、サポート校でも職業教育に力を入れている学校もあるので、そちらの方をオススメします。
全日制私立高校
<どんな高校か>
全日制(朝から夕方まで授業を受けるスタイル)の私立の高校です。
授業は普通科(国語、数学、英語などの普通科目)の授業を受ける形が一般的です。
<入試の形式>
私立高校では「調査書」を求められるところも多いですが、調査書点や欠席日数を重視しない高校もあります。
このような高校では、オープン型入試といって入試当日の得点のみで合否を判定します。(面接試験がある場合もあります)
長期の不登校で、調査書点があると不利になる場合には、このオープン型入試がある全日制私立高校だと受験がしやすいです。
<どんな子が適しているか>
①エネルギーが十分あり、
②中学校と同じいわゆる普通の授業やクラス人数で学び過ごしていける学習能力、対人関係能力、メンタルの強さがすでにあり、
③学力テストに合格できるだけの学習能力がある、
上記の3点がそろっている子が適しています。
いわゆる「高校」なので、個別の手厚い支援は薄いため、30~40人のクラスで過ごし、毎日朝から授業を受けていける力が備わっている必要があります。
そして入試の当日点のみで合格する必要があるため、中学時代の教科学習をきちんと修め、受験準備を入念に行っていかなかければなりません。
これまでお話ししてきた「チャレンジスクール」から「高等専修学校」までの学校を目指すのが適した子に比べて、さらにワンランク上の学習能力、対人関係能力、メンタルの強さが整っている子が適していると言えます。
そのような子であれば、充実した学校生活とその後の進路へ向かっていけると思います。
一方で、十分に力が整っていないまま、「とにかく全日制高校に行きたい」という理由で入学してしまうと、その後不適応を起こして退学、というパターンもありますので、慎重に検討することをオススメします。
まとめ
本記事では不登校のお子さんにオススメの高校・学校として以下を取り上げてきました。
チャレンジスクール
通信制高校
サポート校
エンカレッジスクール
定時制高校
高等専修学校
全日制私立高校
7つもあって、ちょっと情報を整理しきれないわ…
そのようなお声もあるかと思いますので、お子さんのタイプごとにもう一度整理してみますね。
不登校の状態が重い子の順に整理すると以下のようになります。
学習も雑多な環境も苦手で、学習や対人関係力、メンタルの面でも手厚いサポートが必要なお子さんならサポート校がオススメです。
雑多な環境が苦手で、自宅で独学での学習を続けていけるタイプのお子さんなら通信制高校がオススメです。
学習にしっかり取り組めるけれど、雑多な環境が苦手で対人関係力やメンタルの面での手厚いサポートが必要で、作文・面接の受験準備ができるお子さんなら、チャレンジスクールがオススメです。
学習面の手厚いサポートが必要で、雑多な環境でも過ごすことができ、作文・面接の受験準備ができるお子さんならエンカレッジスクールがオススメです。
学習があまりできなくても授業に参加し続けることはでき、雑多な環境でも過ごせるけれど、学力テストや作文・面接の受験準備が難しいお子さんなら定時制高校がオススメです。
学習よりも、早く社会で役立つ技能を身に付けたいタイプで、雑多な環境でも過ごせるお子さんなら、高等専修学校がオススメです。
学習にしっかり取り組め、雑多な環境でも過ごせて、学力テストの準備ができるお子さんなら全日制私立高校がオススメです。
いかがでしょうか。
不登校のお子さんにオススメの高校について理解は深まりましたでしょうか?
中学卒業後の進路というのは本当に悩ましい問題です。
お子さんとじっくり話し合い、担任やかかりつけ医などとよく相談しながら慎重に決めていってください。
本記事が少しでも進路選択の役に立てば幸いです。
本サイトでは、不登校の支援について、お母さまのお役に立てるような記事をアップしてまいります。
よろしければ、他の記事もご覧ください。
それではまたお会いいたしましょう。
お母さま、進路は長丁場になります。気を張り過ぎずゆるみ過ぎず、適度に休みながら立ち向かっていってくださいね。