学びの多様化学校ってなに?
不登校のうちの子に合うかしら?
どこにあるの?入学の条件はあるの?
不登校について調べていると、最近「学びの多様化学校」という言葉を目にしますよね。
お任せください!
本記事で詳しく解説していきますね
本記事では、学びの多様化学校の概要などについて説明するだけでなく、入学を検討する上での大きな注意点にも踏み込んで解説していきたいと思います。
<本記事の内容>
・そもそも学びの多様化学校とは?
・学びの多様化学校の特徴
・学びの多様化学校の魅力と課題
・どこにある?
・入学の条件や方法は?
・入学を検討する上での注意点
・まとめ
本記事を読むことで、以下のことができるようになります。
・学びの多様化学校の概要を知ることができる。
・学びの多様化学校の設置場所や入学に関する情報を知ることができる。
・入学する上での注意点を踏まえて、入学するかを検討できるようになる。
学びの多様化学校についてしっかりと理解したうえで、活用するかを検討していってくださいね。
そもそも学びの多様化学校とは?
学びの多様化学校は、「不登校の子どもへの配慮がなされている学校」です。
学校の教育課程に沿わなくても、不登校の子どもに合った「特別の教育課程」を実施できる学校なのです。
ちなみに「教育課程」というのは、学年ごとに決められた学習内容の計画のことです。
これがあるために、一般の学校では各学年で盛りだくさんの学習を強いられてしまいます。
このことに苦しさを感じて不登校になった子もいるでしょうし、不登校から復帰しようとしても、不登校期間に勉強をしていなかったため、復帰後の学習についていけずまた不登校になってしまう、というケースもあります。
このように不登校の子どもにとってネックとなっていた「教育課程」を、不登校の子ども向けに組み替えて「特別の教育課程」として学習できるようにしたのが、「学びの多様化学校」です。
「特別の教育課程」にしているとはいえ、法律で定められた「学校」ですので、一般の学校と同様に卒業資格を得ることができます。
学びの多様化学校は、実は平成16年にはスタートしていましたが、このころは「不登校特例校」と呼ばれていました。
もしかすると「不登校特例校」なら聞き覚えがあるかもしれませんね。
この「不登校特例校」が、令和5年から「学びの多様化学校」という名前に改称されました。
増加し続ける不登校の児童生徒に対応するために、学びの多様化学校は全国各地に設置が進んでいます。
文部科学省によれば、将来的に全国に300校配置したいと宣言しています。
現在、学びの多様化学校がどこにあるのか、そして何校くらいあるのか、についてはあとで詳しく解説していきます。
学びの多様化学校の特徴
学びの多様化学校の特徴は主に5つあります。
1.授業時間数
一般的な学校の教育課程と比べると、英語や数学などの「各教科の授業数」を少なくし、代わりに自立支援やソーシャルスキルトレーニング、心理的支援などの特別授業が組み込まれています。
2.手厚い指導・支援体制
児童生徒数に対して教員数が多く配置されています。また登校支援チームや心理相談員などの専門家もいて、子ども一人ひとりに手厚い指導を展開しています。
3.個別指導・少人数指導
子どもの状態に合わせて個別指導を行ったり、少人数授業や習熟度別授業を展開したりしています。
4.豊富な体験型学習
不登校の子どもの経験不足を補うために、様々な体験型学習が取り入れられています。
体験型学習の内容は、自然や芸術に触れる体験、ものづくり体験、職業体験などです。
5.保護者への手厚い支援
不登校は保護者の負担がとても大きいため、一般的な学校に比べて、保護者への支援に力を入れています。
学びの多様化学校の魅力と課題
この項目では、文部科学省が実施した「学びの多様化学校実態把握調査」に基づき、学びの多様化学校の魅力と課題を解説していきます。
魅力
学びの多様化学校の魅力について以下に5つ列記します。
◆登校できるようになる
様々な面でゆとりがあり登校へのハードルが低いため、一般の学校では登校復帰が難しかった子どもでも、登校できるようになるケースが多くあります。
◆子どもに良い変化が起きるようになる
登校できることで自信を深めていくことができます。
また手厚い支援の中で、安心感や自己肯定感を育んでいくこともできます。
◆社会性が育成される
自信を深め、安心感や自己肯定感が育まれる中で、様々な人と関われるようになったり、行事に参加できるようになったりすることで、仲間ができたり、コミュニケーション能力が高まったり、協調性が身についたり、と社会性を高めていくことができます。
◆親も精神的に安定しやすい
子どもが変化していくこと、また同じ悩みをもつ親同士で気持ちを分かち合えることを通して、親も精神的に安定して子どもと関われるようになります。
◆進路につながる
学びの多様化学校で安定した登校ができるようになった生徒は、高校進学率がほぼ100%、また進学先の高校在籍率も85%以上に及んでいます。
また児童生徒やその保護者の喜びの声も要約の形で載せておきます。
◎学びの多様化学校に通う児童生徒の声
・自分を変えられた
・分かり合える友だちに出会えた
・学校に行くのが楽しい
・学習の中で自分の成長を感じられる
◎学びの多様化学校に通う児童生徒の保護者の声
・子どもの変化に驚かされた
・子どもだけでなく家族も変わっていく
・学校の在り方に大きな魅力を感じる
課題
学びの多様化学校の課題について、以下に3点列記します。
◆受け入れ環境の課題
子どもの状態に合わせた指導・支援ができる教員がまだ不足しています。
また転入学者の増加により、定員をオーバーして受け入れるしかない学校もあります。
さらにまだまだ全国に学校数が少ないため、通学が遠方からになる場合もあります。
◆教育活動の課題
学力や人間関係による不登校には対処できていますが、なまけの要素が強い子どもへの支援が困難な現実があります。
子どもによって不登校期間が違うことに伴う学習達成度のばらつきや、身につけるべき社会性のばらつきをどのように整えていくか、仕組みを構築していく発展途上の段階にあります。
進路において成果は出ているものの、高校などに進学したあと不適応になるケースも中にはあり、一般の進路につなげる仕組みづくりにおいても発展途上の段階にあります。
◆福祉面での課題
家庭からの理解や協力を得られない場合に、子どもの支援が難しくなるケースがあり課題となっています。
また私立の学びの多様化学校においては、経済的に困難な家庭への支援が行き届かない部分があり、福祉機関との連携を模索している段階です。
ここまで学びの多様化学校の魅力と課題を取り上げてきました。
不登校の改善に確かな効果を発揮していることがうかがえる一方で、学校数もまだまだ少なく、発展途上の一面もあることがわかります。
ただ学校ごとに魅力も課題も異なる部分はありますので、学びの多様化学校を検討する際には、事前によく調べ、学校見学や問い合わせを重ねる必要があります。
色々聞いて検討してみたいなと思うけど、
うちの近くにあるのかしら
次の項目で詳しく取り上げますね!
どこにある?
学びの多様化学校が設置されている地域については、文部科学省の「学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置者一覧」に最新情報が掲載されています。
しかし細かくて少し見づらいので、ここでは設置されている都道府県別に、学校の数と学校名を紹介していきます。
※令和6年現在の情報です。
※公立は(公)、私立は(私)と表記しています。
※小中一貫校も小学校と中学校に分けて記しています。
<北海道>
中学校 1校
星槎もみじ中学校(私)
<宮城県>
小学校 2校
白石市立白石南小学校(公)
ろりぽっぷ小学校(私)
中学校 2校
富谷市立富谷中学校(公)
白石市立白石南中学校(公)
<東京都>
小学校 3校
八王子市立高尾山学園小学部(公)
東京シューレ江戸川小学校(私)
大田区立大森第四小学校学びの多様化学校 分教室みらい学園初等部(公)
中学校 7校
東京シューレ葛飾中学校(私)
八王子市立高尾山学園中等部(公)
調布市立第七中学校 はしうち教室(公)
福生市立福生第一中学校(公)
大田区立御園中学校(公)
世田谷区立世田谷中学校 ねいろ分教室(公)
東京みらい中学校(私)
高校 1校
NHK学園高等学校(私)
<神奈川県>
中学校 2校
星槎中学校(私)
大和市立引地台中学校(公)
高校 1校
星槎高等学校(私)
<岐阜県>
中学校 4校
西濃学園中学校(私)
岐阜市立草潤中学校(公)
高山市立学びの多様化教室(公)
北方町立北学園 特例教室「オンリー1」(公)
<愛知県>
中学校 1校
星槎名古屋中学校(私)
<奈良県>
小学校 1校
大和郡山市立郡山北小学校 分教室「ASU」(公)
中学校 1校
大和郡山市立郡山中学校 分教室「ASU」(公)
<京都府>
中学校 2校
京都市立洛風中学校(公)
京都市立洛友中学校(公)
<大阪府>
中学校 1校
大阪市立心和中学校(公)
高校 1校
精華高等学校 普通科フリーアカデミーコース(私)
<兵庫県>
高校 1校
生野学園高等学校(私)
<岡山県>
高校 1校
岡山県美作高等学校 普通科Bloomコース(私)
<香川県>
中学校 1校
三豊市立高瀬中学校(公)
<福岡県>
中学校 1校
大牟田市立宅峰中学校 ほしぞら分校(公)
<大分県>
小学校 1校
玖珠町立学びの多様化学校(公)
中学校 1校
玖珠町立学びの多様化学校(公)
※中高一貫校
<宮崎県>
中学校 1校
延岡市立南浦中学校学びの多様化学校 分教室「熊野江教室」(公)
<鹿児島県>
高校 1校
鹿児島城西高等学校 普通科ドリームコース(私)
まだ都道府県すべてにあるわけではありませんが、今後も続々と設置されていく予定です。
まだお近くにない場合にも、「一覧」のサイトを定期的に見ていると情報がアップされてくると思います。
乞うご期待ください。
入学の条件や方法は?
学びの多様化学校への入学の条件ですが、「病気や経済的な問題ではない理由で、年間30日以上の欠席をしているか」が基準になります。
ただし不登校かどうかの判断は「学校や教育委員会が柔軟に行う」とされていますので、基準に満たない場合もまずは今在籍している学校に相談してみることをおすすめします。
入学資格に関しては、「公立」の学びの多様化学校のほとんどは、住民票を置いている自治体の子どもが対象となります。
ただし例外もあるようなので、志望する学びの多様化学校に問い合わせてみるのも手です。
「私立」の学びの多様化学校の場合は、「通える範囲」なら入学が可能です。
入学を希望したい場合にはどうすればいいの?
私立と公立で少し違います
「私立」の学びの多様化学校を志望する場合は、学校のホームページを確認して資料を取り寄せるか、直接問い合わせて、手続きを確認する流れになります。
「公立」の学びの多様化学校を志望する場合は、今在籍している学校にまず相談し、手続きを進めていく流れになります。
年度途中の転校も可能ですが、人気になりつつあるため、公立も私立も空きがないところも多いそうです。
新年度からの入学を希望する場合も、前年の夏頃から募集が始まるところもあるため、早めに問い合わせをすることをおすすめします。
学びの多様化学校のこと、ある程度わかったけど、
うちの子は合っているのかな…
やっていけるのかしら…
それが一番不安ですよね。
次の項目で解説していきますよ!
入学を検討する上での注意点
3点お話します。
あくまで「学校」である点に注意
学びの多様化学校は、授業時数が短く設定されるなど、ゆとりがあるとはいえ、「学校」です。
毎日授業はあり、学習をしなければなりません。
そのため、授業に出たり学習したりすることが、今の段階では到底不可能なお子さんの場合、時期尚早と言えます。
この場合、お子さんが学習に少しずつ前向きになっていけるように、心を回復し行動への自信を高めていくことが最優先です。
回復段階の【安定期】の後半、できれば【回復期】に入り、学習への意欲が出てきてからがよいと思います。
※回復段階についてお知りでない場合は以下の記事をご覧ください。
「なまけ」がある子どもの場合は注意
「学びの多様化学校の魅力と課題」の項目でも触れましたが、「なまけ」の要素が強い子どもへの支援が困難な現実があります。
私も教員をしていたので経験がありますが、なまけてしまうという状態が長期化している子どもだと、どれだけ辛抱強く働きかけを続けても、学校の対応だけでは何ともならないケースがあります。
この場合、「なまけ」の原因へのアプローチが最優先になります。
「なまけ」の原因は実は様々です。
ここでは3つ例を挙げてアプローチについて解説します。
①不登校に伴う心の傷が十分に癒えていないための防衛反応
不登校になると必ず心の傷を追っています。というより何らかの心の傷があり、それを修復するために休もう休もうとして不登校になっていくのです。
この状態だと、学校に行かせようとしても、まだお子さん自身の心身は「休む必要がある」と感じているので、自らを守るために、「なまけ」のような反応を示し続けることがあります。
このケースでは、心理的なケアが最優先になります。
まずはゆっくりと休ませ、心の傷をじっくりと癒やし、お子さんに行動への意欲が出てきてから、入学を考えることをおすすめします。
②学習障害など特定の苦手さを隠すための防衛反応
学習障害やその他の理由によって学習に対して多くの失敗経験を積んできたお子さんの場合、学習をさせようとすると、それによって自分がまたみじめな思いをすることから身を守るために、「なまけ」のような反応を示し続けることがあります。
このケースでは、「学習の苦手さ」という特性への支援が最優先になります。
医療機関や学校の特別支援教育などとつながり、お子さん自身が自分の特性についての理解を徐々に深め、「苦手でもがんばってみよう」という意欲が出てから、入学を考えることをおすすめします。
もしくは、志望したい学びの多様化学校に、お子さんの特性について入学前に相談し、学校での支援が可能かを確認してみるのも手です。
③気質に【だらしなさ】があることによるなまけ
これが一番厄介です。
お子さん自身の生まれもった気質に【だらしなさ】がある場合、不登校になったあと、周囲が休ませてくれるのに味をしめて、お子さんの心身はもう十分に回復状態にあるにも関わらず、なまけたまま不登校が長期化していることがあります。
このケースでは、お子さんの【だらしなさ】という気質へのアプローチが最優先になります。
回復段階が【安定期】の後半になったら、家庭でお子さんの苦しさの部分については受容しつつも、【だらしなさ】に基づく行動に対しては「しつけ」の意識をもって対応し、「するべきことはしなければならない」という規律意識を徐々に育てていく必要があります。
規律意識がある程度整い、「一定時間勉強をする」など少しくらいの負荷に耐えられるくらいになってから入学を検討することをおすすめします。
家庭によっては、これまでの親子関係から、「しつけ」を行うことが難しい場合もあるかもしれません。
その場合には医療機関や在籍する学校などに相談して協力を仰ぐのも手です。
※「気質」について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
保護者の学校へのスタンスに注意
「学びの多様化学校の魅力と課題」の項目でも述べましたが、家庭からの理解や協力を得られない場合に、子どもの支援が難しくなるケースがあります。
不登校というのは、対応に様々な角度からのきめ細やかな支援が必要です。
学校だけで頑張ってもうまくいかない。家庭だけで踏ん張っても効果が出ない。
不登校の支援に当たる学校と家庭がしっかりと連携して、はじめて徐々に徐々にお子さんの状態は良くなっていきます。
そのため、保護者が学校に対して協力的でないスタンスの場合には、不登校支援がうまくいかないケースが出てくるのです。
これまでの色々な経験から学校に対して不信感をもたれている家庭もあるかもしれません。
しかし学びの多様化学校という新しい舞台に行くときには、まずは学校に協力しようというスタンスが必要不可欠になります。
以上、入学を検討する上での注意点を解説してきました。
これらの点を十分に踏まえた上で、学びの多様化学校への入学を検討されることをおすすめします。
まとめ
本記事では、学びの多様化学校に関して、
・学びの多様化学校の概要
・特徴
・魅力と課題
・設置している都道府県
・入学の条件や方法
・入学を検討する上での注意点
を解説してきました。
おすすめできないケースもある、など少し厳しいことも書きましたが、お母さまには様々な情報をしっかりと踏まえた上で、お子さんにとって本当に良い道はどこなのかを慎重に考えていただきたいと考え、このように書いてまいりました。
慎重に考え、お子さんともよく相談した上で、学びの多様化学校に入学した子どもたちは、きっと「自分が変われた」「学校に行くのが楽しい」「成長できた」と喜びの声を口にできるはずです。
解説してきた情報がお母さまの選択の役に立つことを心から願っています。
本サイトでは、不登校の支援について、お母さまのお役に立てるような記事をアップしてまいります。
よろしければ、他の記事もご覧くださいませ。
それではまたお会いいたしましょう。
現状を打開したいというお母さまの願いが
少しずつ叶っていきますように。
いつも心から祈っています。
コメント