※本記事は、以下の記事のサブ記事となります。
不登校の原因は大変ややこしく、全体像を理解するには、かなりの分量の記事となるため、いくつかのサブ記事に分けて解説を加えています。
その点、ご了承の上、お読みくださいませ。
では早速、本題に入っていきましょう。
不登校の根本原因は、その子のもつ「気質」です。そして気質にかけ合わされる第一の要因は「その子自身のもつ特殊な性質」です。
そして本記事のテーマとなるのが、それらにさらにかけ合わされる第二の要因「その子を取り巻く環境」となります。
人を取り巻く環境には無数の種類がありますが、ここでは不登校に関わることが多い環境の例を5つ取り上げます。
1.家庭環境
これは確実に言えますが、お母さまの育て方が悪かったから不登校になった、ということはありません。
あくまで不登校の根本的な原因は、その子が生まれながらにもつ「気質」であり、一番影響を与えるのは第一の要因である「その子の特殊な性質」です。
ただ、これからお話しする「その子を取り巻く環境」も、多かれ少なかれ不登校に至る過程に影響を与えていることはあり得ます。
でも、
なんだ、やっぱり私の育て方が悪かったのか…
なんて思う必要はありません。
本記事の目的は、お子さんの不登校に悩まれるお母さまが、乱れがちなお考えやお気持ちを整理して、前向きに子育てに当たっていただくことです。
「気質」と「その子の特殊な性質」を理解くださったお母さまでしたら、今後は次のように考えていただきたいのです。
うちの子には、こういう気質とこういう特殊な性質があるわね。
それに対して、うちの家庭はこうだったから、この部分はうちの子にいい影響ではなかったかもしれない。
なのでその部分だけ少し修正してみようかな。
「育て方が悪かった」と思ってしまうと、自分を責めてしまいます。罪悪感を感じてしまいます。その状態でより良い子育てを進めていくなんて、難しいですよね。だからそうではないんです。
お母さまのこれまでの子育ても正しい。
これまでの何年、十何年の頑張りを誇りに思ってください。
お母さまでなければできなかったことなのですから。
家庭環境の要因について、以下に3点お話しします。
気楽に読み流していただき、もし思い当たる部分があった場合のみ、少し頭の片隅にとどめてくださいませ。
A 親子のあり方
<甘やかし>
とても愛情深い母親の中には、あまりに子どもが可愛すぎて、つい甘やかし過ぎてしまう方もいます。
【人と関わるのが好きなタイプ】&【まじめなタイプ】&【ストレスに強いタイプ】の子どもなら、それでも、周囲の友達の様子や学校の先生との関わりを通して、自分を律することを覚えていくので、問題がない場合も多いです。
ただ【一人が好きなタイプ】&【だらしないタイプ】&【ストレスに弱いタイプ】の子どもの場合、甘やかされることに味をしめて、そのまま成長していくことがあり得ます。
中には、立場的に親の上に立ち、何でも要求し、叶わないと暴れまわるという子どももいます。
こうしたケースでは、学校、その他の社会は、自分の思い通りにいくことばかりではない世界ですから、いくつかの挫折を経て、思い通りにいくことが多い家庭の中に引きこもっていくということが起こり得ます。
余談ですが、【だらしないタイプ】と【ストレスに弱いタイプ】の両方がある子どもは、この2つの気質を踏まえて、しつけと支援を織り交ぜる必要があります。
ストレスに弱いからといって、何でも支えてあげていると、実は、【だらしなさ】を助けてあげているだけの場合もあります。
今はだらしなさが出ているな。ここは毅然とダメと言おう
これはストレスの弱さから来てるかな。なら今回は少し休ませてあげよう
など、様子をよく見ながら、親として「上から」しつけに出る場面と、親として「隣から」見守り支える場面を切り分けていけるといいのではないかと思います。
<母子分離の未達成>
母子分離は、子どもが母親から離れても不安を感じなくなる状態を指します。通常、3歳前後で母子分離を達成し、母親がいなくても外の世界で不安なく行動できるようになると言われています。
ただ【ストレスに弱いタイプ】や【変化を嫌うタイプ】の場合は、母子分離の達成が遅くなる場合も多いですので、その子の気質ごとに個人差があります。
ここで問題となるのは、子どもが【ストレスに弱いタイプ】や【変化を嫌うタイプ】で、母親もまた【ストレスに弱いタイプ】や【変化を嫌うタイプ】の場合です。
このタイプの子どもも、成長とともに少しずつですが確実に外に目を向けていきますが、不安になりやすいので母親を求めます。母親もまた、ストレスへの弱さから子どもの不安に対して自分も不安を感じてしまったり、またこれまでの母子関係を保ちたい欲求があったりして、子どもを招き寄せてしまいがちです。
こうしてなかなか母子分離が達成しにくい状態が続き、学校への登校に強い不安がぬぐえないという事態が起こり得ます。
こういうケースの場合、子どもの気質を踏まえるとともに、親自身にも【ストレスへの弱さ】や【変化への不安】がないかを振り返り、子どもの成長のために、自分自身の不安や欲求をコントロールした対応を心掛けていくことが大切になります。
<無関心・放置・虐待>
この記事を見て下さっているお母さまは、そもそもお子さんを心配して検索なさっておりますので、このケースに該当することはほぼないと思います。簡単にだけ紹介いたします。
親が養育に無関心な場合、
様々な事情で養育に当たる余力がなく子どもを放置してしまっている場合、
虐待をしてしまっている場合、
子どもに影響を与えることがあります。
ただ何度も言いますが、こういった養育環境にあっても、例えば、【人と関わるのが好きなタイプ】&【ストレスに強いタイプ】の子どもは、家庭の外に逃げ場を見出して、社会生活にたくましく順応しているケースもたくさんあります。
一方で、【一人が好きなタイプ】&【ストレスに弱いタイプ】の子どもの場合、情緒の安定を図ることが難しかったり、経験の蓄積を得られなかったりして、学校でも不適応を起こし、不登校につながってしまうというケースもあり得ます。
B 家庭内の不和
両親が不仲、母親と祖父母が不仲、子どもとその兄弟が不仲など、家庭内に不和がある場合です。
上記の<無関心・放置・虐待>と同じく、【人と関わるのが好きなタイプ】&【ストレスに強いタイプ】の子どもは、社会に順応していけるケースも多いです。
一方で、【一人が好きなタイプ】&【ストレスに弱いタイプ】の子どもの場合、不登校につながる要因となり得ます。
また【ストレスに強いタイプ】の場合も、【集団の中にいて調和を保とうとするタイプ】で家庭内の不和を必死に仲立ちする役割を担っていると、頑張りすぎによる息切れを起こし、不登校につながるケースもあります。
もしお母さまのご家庭に、何らかの不和があったとしても、すぐに解消することは難しいですよね。ですので、この場合、不和の解消は可能であれば長期的に目指すとして、その子の気質に応じて、不和によって子どもにかかっている負荷を読み取り、ケアしてあげることが大切かと思います。
例えば、【一人が好きなタイプ】&【ストレスに弱いタイプ】のお子さんなら、不和によって情緒が不安定になっている可能性が高いため、少しでも心に寄り添うような対応をすることがお子さんの心を癒すことにつながります。
【ストレスに強いタイプ】&【集団の中にいて調和を保とうとするタイプ】で家庭内の仲立ちをしているお子さんなら、仲立ちの負担がその子だけにいかないように調和を保つ働きかけをサポートしたり、その子がストレスを解消できるような楽しみを見出して発散させてあげたりするなどのケアが効果的です。
C 家庭環境の急激な変化
引っ越し、親の失業、親の離婚などによる急激な家庭生活の変化です。
【人と関わるのが好きなタイプ】や【集団の中にいて調和を保とうとするタイプ】、【変化を嫌うタイプ】の子どもの場合、非常に強いショックを受ける可能性が高いです。
【ストレスに強いタイプ】で、【人と関わるのが好きなタイプ】や【新しいものごとに興味をもつタイプ】の子どもなら、新しい家庭環境にまだ順応しやすいと思いますが、そうでない場合には、ショックを引きずってしまうことも多くなってしまいます。
もしお母さまのご家庭に急激な変化があった場合、お母さまご自身が本当に忙しく苦しい中に過ごされていることと思いますが、少し落ち着いた段階や気持ちに余裕がある時に、お子さんの気質に応じて、ケアの意識を向けてあげると、お子さんは心が救われた思いがするはずです。
第二の要因~その子を取り巻く環境~の、その1「家庭環境」については以上です。
2.スマホやゲームによる生活リズムの乱れ
生活リズムの乱れには多種多様な理由がありますが、ここ数年で激増しているのが、スマホやゲームです。
学校生活や家庭環境が円満であるにも関わらず不登校になってしまい、どうしてなのか探っていくと、このスマホとゲームにぶつかることが多々あります。
小学生でも自分のスマホをもっていることが増えており、夜中に隠れてスマホをいじったり、ゲームをしたりすることで、夜に眠ることができず、寝不足を繰り返して、次第に朝起きること自体が難しくなっていくケースが本当に増えているのです。
【真面目なタイプ】の子どもは、ある程度自分を律して生活を整えられるケースも多いですが、【一人が好きなタイプ】&【だらしないタイプ】の子どもはのめりこんで、自分でもやめることができなくなり、昼夜逆転が習慣になり、不登校につながるというケースもよくあります。
もしお子さんに【だらしないタイプ】の気質があるようなら、その部分に関しては、親のしつけとしてルールを決める、場合によっては取り上げるなどの対応を毅然と行うことが、その時はお子さんに恨まれても、長期的にはお子さんの成長のためになります。
ただしスマホやゲームにのめりこまざるを得ない他の要因がある場合は別です。
例えば家庭内に不和があり、その現実から目を背けるためにのめりこんでいるのであれば、第一に解決すべきなのはさみしく傷ついているその子の心であって、次にのめりこみの防止です。
とはいえ、どんなケースにしろ、小学生や中学生の子どもが、スマホやゲームを無制限にできる環境に、将来的なメリットは何もありません。
自律の心を養っていずれ自分の力で生きていけるようになるためにも、もしのめりこむ他の要因がある場合にも、ルールを設け、そしてしっかり守らせることは必要です。
3.入学・進級時の環境の変化
ここからは学校に関わる要因です。
まず、小学校や中学校、高校に入学したとき、また上の学年に進級するときの変化が与える影響です。
【変化を嫌うタイプ】の子どもは、入学・進級による環境の変化に強いストレスを感じやすいです。そして、これらに【ストレスに弱いタイプ】の気質もある場合、不登校につながることがあり得ます。
【変化を嫌うタイプ】の気質がお子さんにある場合、今後の人生で環境が変化する各場面でも強い緊張が生じることが予想されます。
しかしその緊張は同じ強さではありません。
【変化を嫌うタイプ】とはいえ、変化を何度も経験するうちに、次第に「変化が起きる」ということが「当たり前なんだ」と体感できるようになっていきます。
もしお母さまのお子さんで、【変化を嫌うタイプ】の気質が原因で不登校になってしまったとしても、その不登校を乗り越え、さらに何度も何度も環境の変化を経験し、その中で生きていける経験を積むうちに、確実に変化への強さが身についていきます。
今はつらい時期かとは思いますが、将来を見据えて、まずは変化によるショックを経験できた人生にとって大切な第一ページととらえてお子さんをお見守りくださいね。
4.学校での人間関係
担任の教師と相性が悪い、クラスメートや部活の仲間に意地悪な子がいる、クラスや部活になじむことができない、クラスや部活に一生懸命なじもうとし過ぎて息切れしてしまった、など学校での様々な人間関係による負担です。
【一人が好きなタイプ】で、意地悪の標的になった
【調和を乱してでも自己主張するタイプ】で、クラスメートから嫌がられた
【集団の中にいて調和を保とうとするタイプ】で、頑張りすぎて息切れした
などなど、色々な気質と組み合わさり、そこに【ストレスに弱いタイプ】も加わって一気にダウンしてしまうケース、【ストレスに強いタイプ】でもエネルギー切れを起こしてダウンしてしまうケースなど多種多様にあります。
意地悪やいじめが明確なケースでは、学校側に相談することで解消を図れる場合も多いです。
一方で、忘れてならないのが、お子さんがどのような気質をもって、どのような学校の要因とぶつかって今に至ったのかを読み取ることです。
例えば、【調和を乱してでも自己主張するタイプ】で、意地悪をされてしまった場合、学校に相談して意地悪が落ち着いたとしても、また別のクラスになったときに、同じことが起きるかもしれません。
この場合は、「意地悪」という学校側の環境要因に対しては学校に対応をお願いするとともに、「自己主張しがち」というお子さんの気質に対してはご家庭でお子さんに理解を促していくことが、成長を助け今後の不登校を防ぐことにもつながります。
このように、気質と要因を切り分けて考えることで、どの部分を誰が対応するかについて明確な目標をもって進むことができるのです。
5.学校での学習
学校での授業や課題提出などの学習活動は、子どもによって強い負担がかかる場合があります。
例えば、
<ケースA>
気質が【真面目なタイプ】で、その子の特殊な性質に【SLD(限界局性学習症)】がある場合、一生懸命に勉強に励んでもなかなか成果が出なかったり、みんなと同じペースで課題を進めることに非常に強い困難さを感じたりして、次第に無力感に陥り、不登校につながるケースがあり得ます。
また、
<ケースB>
気質が【だらしないタイプ】&【ストレスに弱いタイプ】は、授業の難易度が上がったり宿題の量が増えたりした段階で、やる気を失い、やらないのでさらに授業についていけなくなり、不登校につながってしまうという場合もあります。
対応は、その子の気質や要因によって様々です。
ケースAの場合、SLDによる学習のつまづきは専門機関や特別支援教育を活用して、別に支援してあげたり、学校側に配慮をお願いしたりすることで、その子に見合った努力と成果を保証してあげることができるようになります。
ケースBの場合、他の要因がないかを慎重に調べた上で、【だらしなさ】と【ストレスへの弱さ】が原因であるなら、ストレスの弱さに応じた課題量に分けて宿題をやらせる、できたらしっかりと褒める、【だらしなさ】が目立つ行動に対しては毅然と叱る、励ます、などで気持ちを引き締める、などの対応により、学習をその子なりにこなしていける状況にしていくことで、意欲を回復していくことができます。
ただいずれの場合も、不登校になってしまった場合は、不登校に至った心の回復が最優先になります。不登校から無事復帰できた、もしくはある程度回復できた後に行う対応とご理解ください。
「その子を取り巻く環境」についてご理解いただけましたか?
何となくで構いません。お子さんを取り巻く環境の中で、不登校の要因となっていそうなものはありましたか。
ありましたらその要因を頭に置いた上で、元の記事をさらに読み進め、不登校の原因を解き明かしていってください。